伝説の男

2013年2・3月

伝説の男 vol.21 「Rafiqul Islam」

 和食レストラン『ココナツ亭』。その現オーナー・Rafiqul Islam(通称Lafy ラフィ)は、1970年バングラデシュで生まれた。この国では1日$2以下で暮らす貧困層が約75%を占め、国民の多くは海外へ出稼ぎに。カレッジを卒業した彼もまた、その道を選んだ。1997年、サイパンの警備会社に合格。当時の給料は2週間で$300程度。それでも生活費と故郷の一族が暮らすには十分な額。しかし、与えられた仕事はホテル宿泊者である日本人以外を立ち入らせないための見張り番。一日、ただそれだけの役割。もっと頭を使って、頑張れば給与も上がる達成感ある仕事がしたい。そんな想いが募り、3ヵ月後には転職を決めた。  転職先は日用品を販売するお店。韓国人オーナーと自分だけの小さな会社だったが、日用品が分割払いで買えるシステムが当たり、飛ぶように売れた。しかし、人口減が加速。同時に通販が台頭したことで売上は激減。そろそろクビか…そう思っていた時、オーナーは逆に彼の給料を引き上げる。しかも売上インセンティブまで設定してくれた。ありがたい話だった。が、期待にどうやって応えればいいのか、まるで思いつかない。そんな時、オーナーからアドバイスが…いろいろな会社の寮に訪問販売してみては? これが大当たりした。「絶対にあきらめるな。Always Fightするんだ。くじけそうになる自分とFightするんだ」。 オーナーの口癖が、いつの間にか自分の口癖になっていた。

 12年後「蓄積した経験とお金で自分のビジネスがしたい」とガラパンにあるマーケットを購入した。ところが、売上好調な物件にもかかわらず…わずか3カ月で力尽き、売却。自らを振り返り、敗因を見つめ直した。絶対にあきらめないぞ。そう心に誓った時、『ココナツ亭』の話が舞い込んだ。売り上げは一気に落ちたが、怖くはなかった。やがて広告・宣伝の甲斐もあり、売上は上向きに。そして半年後『さくらマリンスポーツ』をスタートさせた。

 「大統領は、いわば経営者。国家を動かす専門家を育てるのが仕事だと思う。同様に僕の役割は、スタッフが自ら喜んでお客様に満足を提供していく、そんな環境をつくること」。こう語るこの男、日本料理もチャモロ料理も食べたこともなかった。バナナボートにも乗ったことがない、マニャガハ島に行ったこともなかった。にもかかわらず、この島でふたつの事業を育てている。経営とは何か、あらためて考えさせられるところだ。

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