伝説の男

2013年12・1月

伝説の男 vol.20 「Togawa Yuki」

 1942年6月、日本橋で生まれたTogawaYukiは父親の仕事柄、幼少期より海外生活を経験していた。といっても、就職した先は不動産会社。海外とは縁のない建売の仕事だ。建売は一般的に広い区画を区切って量産的に建てるため、注文住宅と比べて顧客の要望を反映するのは難しいが、コストパフォーマンスの高い物件を生み出す。この建売の仕組みを海外に持っていけないだろうか。そう考えたのは40歳を過ぎた頃。そこで1986年から2年間、徹底的にサイパンをリサーチ。結果、‘建築法が日本より緩く、気候も良く、人件費も材料も安い’ことが判明した。不安点はあるものの、勝算はある。そう決断した彼は1988年、SNE CO., LTDを設立し、サイパンでの事業をスタートさせた。

 日本の建売システムを初めてサイパンの不動産業界に導入した結果、見事にブレイク。すぐに自分の家を建て、アパート経営にも乗り出した。しかも、1990年代のサイパンは好景気の真っ只中。日本からリタイアした人に住宅が、投資家には店舗物件が飛ぶように売れる。観光客が押し寄せるサイパンは活気に溢れ、予想以上の収益が転がりこんだ。しかし、その後、この島の経済は急速に悪化していく。観光客は激減、今や建物をつくっても買い手はいない。

 70歳を迎えた今、取り組んでいるテーマがある。そのひとつが‘Eco Island Project’。ソーラーや風力で生み出した電気でバスやボートを走らせ、住宅に電気を灯すことで、豊かな大自然を後世に残す。電気代が安くなれば投資もしやすくなるうえ、町も海も健康的に美しくなれば、おのずと観光客は増え、再びこの島は元気になるはず。こう確信して推進しているプロジェクトだ。実現には、まず政府が観光地であることを再認識し、安全で綺麗な土地柄にしていく努力が必要。そこ で政府に提案したのが‘Safety & Clean Project’。ちゃんと管理されていないその土地を政府がチェックし、きちんと整備・販売すれば、観光客にとって、もっと美しく不安のない島になるはずだ。こう熱弁するこの男。今、その瞳に宿っているのは、あの日のような利益ではない。郷土愛…私にはそう見えて仕方がない。Togawaさん、サイパン活性化のために、ぜひ、頑張っていきましょう!!

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