伝説の男

2012年10・11月

伝説の男 vol.19 「Butch Y. Sigua」

「NAKED FISH BAR & GRILL」のオーナー・Butch Y. Sigua(ブッチ シィグア)はフィリピン・マニラ生まれ。5歳の時、叔父の事業を手伝うことになった父親と共にサイパンの地に降り立った。小学校~高校はサイパン、大学はフィリピンのユニバーシティへ進学。卒業後、再びこの島へ戻り、叔父の会社に就職する。ハードウェア、玩具や手芸品などの小売店を展開するこの会社で彼はコンピューターシステムを担当。やがてマネージャーに昇進し、徐々に能力は開花していった。

 飲食ビジネスの経験は、同社の新規事業であるファストフード店で。出店から7年間、責任者として汗を流し、ガラパンとチャランカノアに2店舗をオープンさせた。また、その活躍ぶりを聞きつけたグアムの会社から「こっちの店の立ち上げを助けてほしい」とのオファーも。グアムでも惜しみなく能力を発揮し、3店舗もの出店をサポートした。そして、その2年後、サイパンに戻ると…なんと皮肉にも自らが育てたチャランカノア店はすでに撤退。ガラパン店も閉店が決まっていた。  しかし、独立のチャンスは突如訪れる。害虫駆除会社を経営する友達が米国に帰ることになり、ノウハウを教えてくれるというのだ。これをきっかけに[ADVANCE]という会社を創業。アリなどが多いサイパンでは需要が多く、学校、レストランを得意先にビジネスは大成功する。現場に出ると「エアコンはなおせない?」との声が多く、なら…とエアコン修理会社も設立。この事業も軌道にのせた。

 そんなある日、会社の隣にある飲食店のオーナーからお店の譲渡を持ちかけられ、思い切って買うことに。メニューを増強し、サービスにも注力した結果、開店初日の客数は3名、売上100ドル以下という惨憺たる結果。次の日は150ドル。こんな調子が1カ月も続いた時、閉めようかと悩んだ。が、最後にもう1チャンス! バンドを入れてみよう…これが見事に当たった。

 不景気に喘ぐこの島で、常にポジティブに道を模索し、切り開き続けるこの男。それを支えてきたのは、何よりも従業員だという。「元々、僕は成功者だったわけじゃない。ここまでこれたのはみんなのおかげ。だから自分だけじゃなく、みんなで幸せになりたい。  スタッフと一緒にマウンテンバイクを楽しむ、その瞳には、チャレンジ精神と深い愛が仲良く同居していた。

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