2012年1月
伝説の男 vol.13 「Noel Slapp」
オーストラリア・シドニー出身のNoel Slapp(ノエル・サラップ)は、大学卒業後、船のキャプテンという仕事に就いた。にも関わらず、船の保険会社のコンサルタントとして世界に漕ぎ出したのは今から30年前のこと。フィジー、トンガ、バヌワツなど美しい南太平洋の島々を転々とし、さらにフィリピン、韓国を経て、やがてサイパンにたどり着く。以来、自ら船の保険会社を立ち上げ事業を展開中だ。
仕事柄、お堅い人物か?と思いきや・・・1999年、ススペ地区でトップレスバーを経営。2002年には『CLASS MATE』というバーを。そして2004年、動くマネキンとしてウェイトレスがお洒落な服を装い、流行の発信源となるファッションバー『MANIC INN』をオープンさせたのが彼。しかし、ビッグな仕事が舞い込んだため、3年間、留守を預けてシンガポールへ。帰ってきた時には、彼が描いたコンセプトからすっかり軌道を外れてしまっていたらしい。
これではダメだ、とカフェ&バーとしての再出発を決意した彼の視線は、一転、「健康」へと向かう。まずはフードメニュー。当初はシーフードだけ。今では肉類もあるが、例えばハンバーガーのパティはサーロインを使った自家製。これをバージンオリーブオイルで焼いて余分な脂をそぎ落とす。魚は、魚にストレスを与えない延縄漁で獲れたものだけを特別に仕入れ、野菜は新鮮な地元産もしくは自家菜園で育てる、というから驚きだ。コーヒーはインドネシアのトラジャコーヒー。オーダーごとに豆を挽いて淹れる。アルコール類も安物は使わない。ナチュラル&プレミアムにこだわり、テキーラはアガベ100%の上質なものを。電気はソーラーパワー。BGMは誰も聴いたことのない曲を探し出して流す・・・と隅々まで妥協を許さない。
店内に所狭しと飾られている写真の数々。フォトグラファーも実は彼。趣味が高じて、今や作品を買いたい、という人がいるほど。さらにサーフィン、水泳、ランニング…そのすべてにありったけの情熱を注いでいる。そんな彼に、今、一番楽しいことは?と質問してみた。答えは「保険の仕事」。船で事故があった時、珊瑚礁に乗り上げたりすると自らダイビングして状況を確認しなくてはならない。それがまた、エキサイティングらしい。エネルギッシュ。この男の泉は、当分と枯れそうにない。