2011年12月
伝説の男 vol.12 「Francisco DLG Cabrera」
Francisco DLG Cabreraは、通称‘フランキー’と呼ばれるデザイナー、33歳。地元コミュニティーのためにできることを!と「ForthePeopleBythe People」をスローガンにスタートした『670RockSteadyShop』のオーナーだ。複雑な歴史を歩んできたサイパンで、協力し合ってひとつのことを成功させるのは簡単ではない。ところが、彼は何人ものデザイナーの魂を動かし、今や8ブランドのTシャツをはじめ地元のアイデンティティーを発信する人気ファッション店をつくり上げた。その成功の裏には、故郷に対する熱い想いがある。 3歳の時、両親が離婚。母親の再婚相手が軍人だったため、この島を離れドイツ、フランスなどを転々した幼少時代。7歳の時に再びサイパンへ戻るものの、高校3年から大学までの青春時代はハワイで暮らした。自分はいったいどこの人間なのか…そんな疑問を抱くようになった時、母親があらためて教えてくれたという。「あなたのルーツ、ホームはサイパンだよ」と。
アートに関心を持ち、ファッションに関するビジネスをしたいと願っていた彼は、身近なTシャツから始めようと決意。2006年、いわばミクロネシアのオリンピック‘MicronesianGame’の会場に、自らデザインしたTシャツをビニール袋に詰め込んで出かけた。国旗と同じカラーのブルー地、その背面には国旗をデザイン。これがあっという間に完売。彼の名は口コミで広がり、翌2007年にはショップをオープンさせるまでに。最初のブランドは「Magas/StressFree」。Magasはチャモロ語で、プロフェッショナルという意味。StressFreeは文字通り‘ストレスなし’。先進諸国の生活はとにかくストレスが多い。けれど、サイパンには家族、友達がいて、アイランドスタイルののんびりした生活があり、そのすべては私たちの宝物。どうか自信をもって、みんなストレスフリーになってほしい。そんなメッセージを込めたものだ。彼が生みだすデザインは、ただ、カッコイイだけではない。この島への愛が注がれた産物なのである。
バスケットボールや野球チーム、学校のファッションショーのスポンサードなど地域貢献にも積極的に取り組むフランキー。足には漢字で「信・愛・義」というタトゥが刻まれている。故郷サイパン・北マリアナに誇りを持ち、永遠の愛を誓うこの男。その姿を見ていると、日本人が忘れかけている愛国心について、深く考えさせられた。