2012年6月・7月
真夏の中村あゆみ Vol.17
5月5日、すでに4回目となった横浜・赤レンガ倉庫でのライブ当日。今回はそのステージを大いに楽しませてもらった後、楽屋にお邪魔して取材することになった。「あゆみちゃん、お疲れさま。今回はますます迫力あるステージだったね」。「ね、よかったでしょ? 今日は、いつもに増してガンガンいったからねぇ」。汗だくのステージの直後、心身ともにグッタリで取材どころじゃないのでは・・・と内心ドキドキしていたのだが、そんな心配はこれっぽっちも必要なさそうだ。ほっと胸をなでおろした、その時、ふと疑問が湧いた。中村あゆみはこの先、どこまでこのボルテージで走り続けるのか、と。
「最近、思うんだよね。世の中にお金持ちはたくさんいるけど、ただお金を稼ぐために頑張るんじゃなくて、自分が本当に好きなことをやって、ちゃんと生活している人っているじゃない? そっちの人生のほうが‘人生の利益率’が大きいんじゃないかって。そう思ったら、私は歌うことが好きで、それが皆さんに喜んでもらえて。一生懸命やって、変に無駄使いしなければ、ちゃんと生きていける。これって幸せなことなんだよね」。この答えには本当に驚いた。言葉だけを見れば、質問の回答にはなっていない。けれど、実は真に僕が聞きたかったこと、いや、僕自身が悩んでいたことかもしれない。それを彼女はまるで見越していたかのように、スパッと返してきたのだ。
「でね、おかげさまでまだ体力もあるし、目標は60歳かな?それまでに死ぬほど歌って、いい曲をいっぱい作って、還暦記念に赤いちゃんちゃんこ着て武道館ライヴやるんだ。それまでは全開よ」。いくつになっても‘幸せとは何か’を模索しながら、日々、悶々と生きている人がいる。僕もその一人。しかし、彼女のたった一言が、僕の心の靄を吹き飛ばしてしまった。そして、自分もこうしちゃいられないぞ、頑張らなくちゃ!そう思えてくる。そういえば、台風がサイパンを襲うと、山も海も洗い流され、その後、さらに美しい島に甦る。中村あゆみが放つエネルギーは、なんだかそれに似ている。 赤レンガ倉庫に続いて、早くも7月19日(木)、東京・赤坂サカスでライヴを開催するらしい。『赤坂BLITZ First Live~勝負はストレート~』(開場18:00/開演19:00 全席指定\6,500)-中村あゆみという台風は、目の中にファンを確実に巻き込みながら、60歳の夢に向けて成長を続けている。