真夏の中村あゆみ

2011年10月

真夏の中村あゆみ Vol.10

 8歳でデビューして、27年。今でもあの頃と変わらないハスキーボイスでステージを駆け回る中村あゆみ。シリーズ第3回は‘奥深くまでのぞいてみたい’という僕のワガママから静かな場所で取材させてもらうことに。指定された場所は都内の住宅街。『桃園文庫』という、まさに隠れ家と呼ぶにふさわしい喫茶&創作料理の小さなお店だ。「この店の料理がメチャ美味しいのよ」。その第一声から推察するに、どうやら行きつけのお店らしい。

 心の扉を開かせるにはまず隙間を見つけて、そこからこじ開けていく。ヒアリングの基本だ。まずはその基本に沿って、最近の悩み事から質問してみた。「ん~ん、ないね」とスッパリ。「人並みに暮らせて、中学1年になる娘もなんだかんだあるけど、しっかり育ってるし。個人的にはありがたく生かしてもらってるんだよね。これからの日本はどうなっていくんだろう、みたいな不安はあるけど。 これといって悩みって、ないんだよねぇ」。あっけらかんと話す表情に嘘はない。これでは深堀り計画は頓挫してしまう、というわけで質問を回れ右!することにした。

 45という歳になって、夢ってある?「あるに決まってるじゃない!60歳でさ、武道館クラスの会場でロックのコンサートやるんだ!女性で60歳でロック・・・なんて今までいないよ!初をやりたいじゃん。豪華なバッグとか時計とか、そんなものはもう欲しいとは 思わないね。ただ、自分の生きてきた足跡を残したいんだ」。目標に向かって突き進むだけ、と熱弁する瞳はキラキラと少女のよう。大きな目標があれば地図はいらない。逆に地図はあっても目標がなければ、どこに行っていいものかと踏み出せない。説得力ある言葉に、大きくうなずいてしまった。

 そういえば、7/23にリリースされたアルバム『1966628』の中に収録されている‘ひとにぎりの勇気’。地図なんかいらない。迷った時、少しの勇気があれば前に進めるし、未来は変わる、という内容のこの曲。どうやら中村あゆみの人生観そのものらしい。10月10日(月・祝)、横浜の赤レンガ倉庫ホールで中村あゆみのライブが開催される。「初期の頃の激しいナンバーを集めたノリノリのステージやるから、田中さんも来てね!」 というお誘いにも、大きくうなずいてしまったが、このライブもきっと彼女の60歳の夢への道程。そのひとつひとつを胸の奥に記しておきたい。心からそう思った。

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